説明
和墨メダカは、白容器や明るい水槽でも黒斑が褪せにくい「背地反応なし」の性質を持つ白黒系メダカで、オロチの系譜と女雛を基に斑個体を選別累代して確立された系統です。
作出は茨城のめだか専門店ぱれっとによるもので、2019年作出・2021年リリースと整理され、和紙に墨を垂らしたような墨模様とヒレの黒サシが和の趣を強く打ち出します。本稿では、純系・新系統・三色の違い、リアルロングフィン等の派生、飼育と選別の基準、繁殖設計、購入やイベント情報までを一気に解説します 。[1][2][3]
和墨メダカとは
和墨メダカは「背地反応なし」の白黒メダカです。たとえ白容器や透明容器に入れてもはっきりと墨のような黒色の斑模様がはっきりと出てきます。
「背地反応なし」はオロチメダカの形質を受け継いだものですが、和墨メダカが作出されて以降、容器の色に影響を受けない柄物のメダカが多数作出されました。まさに和墨メダカは楊貴妃や幹之などと並んで、改良メダカの歴史に残る転換点となる品種といえるでしょう。
定義と作出背景
和墨は、オロチのヒカリ体型×女雛から出たブチ個体を選別累代して確立された白黒の斑表現を核とする系統です。作出者はめだか専門店ぱれっと(有岡麻世氏)で、2019年に作出、2021年にリリースされたと紹介されています。品種の肝は白地と墨のコントラスト、ヒレに入る筋状の黒サシで、上見・横見ともに見応えがあります 。
背地反応なしという革新性
一般的な斑系メダカは白容器など明るい環境で黒が褪せやすいのに対し、和墨は黒斑の褪色が極めて起こりにくいのが最大の特徴です。オロチ由来の「背地反応なし」が遺伝しており、白容器で24時間経過しても斑が維持される事例が示されています。これにより、ガラス水槽や白系容器でも本来の柄を保った観賞が可能になりました 。
和墨の派生品種
和墨の派生品種について解説します。
和墨三色
和墨三色は和墨の白黒模様に三色の朱赤色を加えた品種です。背景が薄くても色落ちしない三色メダカということで、作出された際は話題となりました。現在もはっきりとした三色模様の個体は高値で取引されています。

和墨三色α
和墨三色αは和墨三色よりも白地をはっきりさせた品種です。まさに和墨三色にプラスアルファを加えた品種です。白と黒と朱色のコントラストが美しく、非常に高額で取引されています。
和墨メダカのバリエーション
純系・新系統・三色
– 和墨 純系統: グレーに近い白地へ滲むような墨が入る白黒の基本形で、ほぼ白黒柄に収束するよう選別されています。選別では、ヒレ墨を重視するなら黒勝ち、上見の柄のキレ重視なら白勝ちを推奨し、極端な黒勝ち累代で白地が消えてオロチ化する点に注意が必要です 。[4]
– 和墨 新系統: 和墨三色を作る過程で派生した白黒系で、マットホワイトの白地にキワの鋭い墨が乗ることを理想とします。白地がグレーの個体も生じるため、白の質と墨の切れ味を基準に選別します 。
– 和墨 三色: 和墨純系×「ぱれっと紅白」(女雛紅白×あけぼの紅白×雲州紅白の累代)から生まれた三色体で、白容器でも黒が褪せない三色という革新性を持ちます。ヒレへの黒サシも魅力で、三色系の常識を覆す観賞性が評価されています
リアルロングフィンやヒレ長派生
– 和墨 リアルロングフィン: 和墨純系×ヤマタノオロチ・リアルロングフィンの累代で成立。横見の造形美とヒレの黒サシが強調され、人気の派生です(鹿行めだか作出) 。[10]
– その他派生: 和墨松井ヒレ長や、三色リアルロングフィンなど、和墨の墨質とヒレ美を融合した派生が多数報告されています。派生でも和墨の背地反応なしの強みを活かせる点が大きいです 。
和墨メダカの飼育と見せ方
容器色・日照・水深のセッティング
白黒のコントラストを締めるなら黒容器が基本で、上見の柄のキレが際立ちます。白容器やガラス水槽でも褪色しにくいのが利点ですが、演色性の高い照明や自然光を使って陰影を出すと墨の艶が乗ります。浅めの水深は背の柄を見せやすく、屋外では午前中の斜光・反射光の環境が観賞に適します 。
水質安定と観賞スタイル
三色系一般の飼育目安に準じ、中性付近の水質安定、十分な溶存酸素、少量高頻度の換水で透明度を維持します。白地の黄ばみや濁りは柄の解像度を下げるため、苔管理と給餌量の調整が重要です。上見は群のリズム、横見はヒレの黒サシと体高バランスを重視して配置・照明を決めると映えます 。
選別・固定率・繁殖の実務
白勝ち・黒勝ちの基準と墨質評価
選別では、白勝ちは遠目の上見で柄の切れ味が出やすく、黒勝ちは横見のヒレ墨が映えます。いずれも墨質は「深く艶のある黒」を優先し、白地が消えるほど黒比率を上げないのがコツです。普通鱗は墨が濃くなりにくい傾向があるため、鱗表現も基準に含めて評価すると精度が上がります 。
繁殖設計と世代管理
繁殖は一般手順に準じ、25度前後で産卵床を用意して採卵し、別容器で孵化・育成します。三色狙いの場合は、白地の質と墨の配置を重視した親組でライン分けを行い、赤の厚みを狙うラインと白黒のコントラストを狙うラインを分岐させると回転が良くなります。背地反応なしの強みを活かして水槽環境でも選別を進めやすいのが利点です 。[9][8][1]
和墨メダカの購入・相場・イベント
入手ルートと相場感
和墨は専門店や作出者関連のルート、イベント販売での現物購入が主で、純系・三色・RL派生などバリエーションで価格帯が変動します。現物販売では、白容器での見え方確認やヒレ墨の入り方、白地の質感をその場でチェックできるのが強みです。和墨フェア等の特集販売は比較や相談がしやすく有用です 。[6][3]
展示会や作出者情報のチェック
作出者主催の展示会・血統展覧会の開催報告もあり、和墨の系譜や選別基準の共有が進んでいます。こうした場での受賞個体や系統解説は、導入時の目利きに直結するため、SNSや記事での情報収集をルーティン化すると良いでしょう。和墨の派生報告も多く、最新動向のキャッチアップが有益です 。
まとめ
和墨メダカは、白容器や明るい水槽でも黒斑が褪せにくい背地反応なしの性質を軸に、白黒の純系から鋭い墨の新系統、白容器で映える三色、リアルロングフィンなどへ広がった現代的系譜です。飼育は一般基準で安定させ、容器と光でコントラストと艶を引き出します。選別は白勝ち・黒勝ちを目的に合わせて使い分け、墨質の深さと白地の保全を最重視。繁殖はライン管理で狙いを分岐し、世代を通じて白黒バランスとヒレ墨の再現性を磨くのが近道です。導入は現物確認できる販売機会や展示会の活用が効果的で、作出者発の情報を継続的に追うことで、和墨らしさを最大化できます 。
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