説明
サタンメダカはオロチのヒレ長タイプで、とても人気が高いです。サタンはヒレ長メダカの中では飼育しやすく、繁殖も容易です。
固定率も非常に高く、ほとんどのメダカはヒレ長として産まれてくるため初心者にもおすすめ。
サタンメダカは、愛媛のめだかのビーンズの丹下学氏によって作出されたブラック黄金ヒレ長メダカのニックネームで、正式な品種名は「ブラックヒレ長メダカ」です。形質補足としてブラック(ヒレ黄)、共通補足として背地反応なしが付与されており、管理番号は種類No.0632、品種No.0612として登録されています。黄色素胞のあるブラック体色(ブラック黄金体色)にヒレ長の形質を併せ持つ品種で、特にオスの腹側とヒレに現れる黄色い発色が特徴的です。オロチメダカにヒレ長を交配した系統として「オロチヒレ長」とも呼ばれ、その固定率の低さから繁殖の難しさでも知られています。
サタンメダカとは
サタンの固定率
サタンの固定率は高いです。ほとんどのメダカがヒレ長として産まれてきます。ただし、色が薄かったり、容器の色によって黒色が薄くなったりするなど、クオリティにはバラツキがあります。とはいえ、改良メダカの中では固定率はかなり高いほうだと思います。
サタンのバリエーション
サタンにはいくつか系統があります。ヒレの色が透明な血統、ヒレが黄色くなる血統、そしてレッドテールと言われるヒレが赤色になる血統です。ヒレが透明のサタンがオロチに近く、一番黒くなります。ヒレに色が入るサタンも人気が高いです。
基本情報と作出背景
サタンメダカは、愛媛県のめだかのビーンズを運営する丹下学氏によって作出された改良メダカです。丹下氏は改良メダカ界において数多くの優秀な品種を手がけており、アマテラスなどの品評会受賞品種でも知られる実力派ブリーダーです。サタンメダカもその代表作の一つとして位置づけられています。
品種としての正式名称は「ブラックヒレ長メダカ」で、形質補足としてブラック(ヒレ黄)、共通補足として背地反応なしが付与されています。これは、通常のブラック体色とは異なり、黄色素胞を有するブラック体色であることと、環境に応じて体色を変化させる背地反応がないことを示しています。
作出の起源については、ブラックキング(黒蜂×松井ヒレ長)にオロチを交配して作出された系統がサタンの起源とされています。この複雑な交配により、オロチの濃い黒色と松井ヒレ長の美しいヒレ、そして黒蜂由来の黄色発色という三つの特徴を併せ持つ独特のメダカが誕生しました。
名前の由来と品種特性
「サタン」という名前は、悪魔を意味する英語から取られており、その濃い黒色の体色と威圧感のある外観から名付けられたと考えられます。実際に、サタンメダカの漆黒の体色と長く伸びたヒレが作り出す姿は、神秘的で力強い印象を与え、この名前にふさわしい威厳を持っています。
品種の主要な特性は、ブラック黄金体色とヒレ長の組み合わせにあります。ブラック黄金体色とは、基本的には濃い黒色でありながら、黄色素胞を有するため、特定の部位に黄色い発色が現れる特殊なブラック体色です。特にオスの多くは前半身の腹側とヒレが黄色く色づき、この黄色と黒のコントラストが美しい表現を作り出します。
ヒレ長の特徴により、すべてのヒレが大きく伸長し、さらに軟条も伸びる独特のヒレを持ちます。この伸長したヒレが泳ぐ際に優雅に揺れる様子は、まさに水中を舞う悪魔のような神秘的な美しさを演出します。また、体高がやや低く筒状に近い体型の傾向があることも、サタンメダカの特徴の一つとされています。
サタンメダカの魅力と表現
ブラック黄金体色とヒレ長の美しさ
サタンメダカの最大の魅力は、ブラック黄金体色とヒレ長が織りなす独特で美しい表現にあります。基調となる濃い黒色は、保護色反応をしない安定した発色で、照明や背景に関係なく深い漆黒を保持します。この黒色の深さは、一般的なブラック体色よりもさらに濃く、まさに闇のような神秘的な美しさを持っています。
オスに現れる黄色の発色は、黒蜂から引き継いだd-rR遺伝子によるもので、前半身の腹側とヒレに美しい黄色が現れます。この黄色と黒のコントラストは非常に印象的で、特に泳いでいる時の美しさは格別です。黄色の発色は個体差があり、鮮やかな黄色から淡い黄色まで様々な表現を楽しむことができます。
ヒレ長の表現については、松井ヒレ長由来の特徴により、すべてのヒレが大きく伸長します。特に尾ビレと背ビレの伸長が顕著で、泳ぐ際の優雅な動きは見る者を魅了します。ヒレの先が裂けることが多い品種のため、ヒレの裂けていない個体が優良とされ、選別の重要なポイントとなっています。
オロチメダカとの違いと独特の特徴
サタンメダカは「オロチヒレ長」とも呼ばれることがありますが、単純なオロチメダカとは明確な違いがあります。最も分かりやすい違いは、ヒレの長さです。オロチメダカは普通のヒレの長さですが、サタンメダカはすべてのヒレが大きく伸長しており、この差は一目で判別できます。
体色についても微妙な違いがあり、サタンメダカのブラック黄金体色は、純粋なオロチの黒色とは異なる質感を持っています。特にオスに現れる黄色の発色は、オロチにはない独特の特徴で、この黄色により全体的により複雑で豊かな色彩表現を楽しむことができます。
体型についても、サタンメダカは体高がやや低く筒状に近い体型の傾向があります。これは交配に使用された系統の影響によるもので、オロチの標準的な体型とは異なる特徴です。この体型により、より流線型で泳ぎに適した形状となっており、ヒレ長と相まって優雅な泳ぎを見せます。
また、2018年にFUJIYAMAめだかから発表された松井ヒレ長オロチとも別系統であり、こちらはヒレに黄色が出ないという明確な違いがあります。このように、類似した名前や外観を持つ品種が複数存在するため、購入時には系統の確認が重要です。
サタンメダカの飼育方法
基本的な飼育環境と水質管理
サタンメダカの飼育は、基本的には一般的な改良メダカの飼育方法に準じて行うことができますが、ヒレ長品種特有の注意点があります。水温は23~28度の範囲で管理し、特に25~27度を維持することで、美しい黒色とヒレの成長を促進できます。急激な温度変化はヒレの損傷や体調不良の原因となるため、安定した温度管理が重要です。
水質については、弱酸性から中性(pH6.5~7.5)の範囲で安定させることが理想的です。ブラック体色の美しさとヒレ長の健康を維持するためには、清浄な水質環境が不可欠で、アンモニアと亜硝酸は常にゼロ、硝酸塩は20ppm以下に維持することが推奨されます。
容器選択では、サタンメダカの美しさを最大限に引き出すため、白色や透明の容器を使用することをおすすめします。黒い背景では体色が背景に溶け込んでしまい、特にオスの黄色い発色が見えにくくなる可能性があります。白や透明の背景により、漆黒の体色と黄色のコントラストを美しく観賞できます。
ヒレ長品種のため、容器は通常よりも大きめのものを選択し、ヒレが容器の壁や装飾品に接触して損傷しないよう注意が必要です。また、鋭利な装飾品は避け、ヒレに優しい環境を整えることが重要です。
ヒレ長を美しく保つ飼育テクニック
サタンメダカの最大の魅力であるヒレ長を美しく保つためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、適切な水流の管理が必要で、強すぎる水流はヒレに負担をかけ、裂けや損傷の原因となります。濾過装置は流量調整が可能なものを選択し、ヒレが自然に泳げる程度の緩やかな水流を維持します。
水質の透明度維持も重要で、濁りや汚れはヒレの美しさを損なうだけでなく、細菌感染のリスクを高めます。定期的な水換えと底床の清掃により、常に清澄な水質を保つことが必要です。特にヒレ長品種は、ヒレの表面積が大きいため、水質悪化による影響を受けやすい傾向があります。
給餌についても注意が必要で、栄養バランスの取れた高品質な餌を適量与えることで、ヒレの健康な成長を促進できます。過給餌は水質悪化の原因となるため避け、メダカが数分で食べきれる量を一日2~3回に分けて与えます。
照明については、ヒレの美しさを観賞するため、適切な照明設備を設置します。LED照明を使用し、ヒレの透明感や黄色の発色を美しく見せる角度から照射することで、サタンメダカの魅力を最大限に引き出すことができます。
サタンメダカの繁殖と選別
繁殖方法と固定率について
サタンメダカの繁殖は、一般的なメダカの繁殖手順に従って行いますが、複数の形質を持つ品種のため、固定率が低いという特徴があります。水温を25~28度に設定し、産卵床としてホテイアオイや人工産卵床を用意します。ブラック黄金体色とヒレ長の両方を高いレベルで表現する個体を得るためには、優良な親魚の確保が不可欠です。
固定率については、約3割程度とされており、理想的な表現を持つ個体の出現率は決して高くありません。ヒレが伸びなかったり、黒みが薄い、オスの黄色い発色が弱いなどの課題があり、作出するのは難しい改良メダカとして知られています。この低い固定率が、サタンメダカの希少価値を高める要因ともなっています。
採卵は定期的に行い、卵を別容器に移して孵化させます。稚魚期の管理は特に重要で、適切な水温と栄養管理により、ブラック体色とヒレ長の両方の表現を最大限に引き出すことができます。ヒレ長の表現は成長とともに徐々に現れてくるため、長期的な観察と段階的な選別が必要です。
世代管理においては、詳細な記録を取りながら計画的な交配を行うことが重要です。特にヒレ長の表現が優秀で、オスの黄色い発色が美しい個体は種親として大切に管理し、系統の品質向上と固定率の改善に努めます。
選別のポイントと親魚選択
サタンメダカの選別では、まずヒレ長の表現を最優先に評価します。理想的な個体は、すべてのヒレが適切に伸長し、特にヒレの先が裂けていない個体です。ヒレの裂けは遺伝的な要因もありますが、環境要因も大きく影響するため、両方の要素を考慮した選別が必要です。
ブラック体色の評価では、濃い漆黒の発色を持つ個体を高く評価します。薄い黒色や、グレーがかった個体は選別から外し、背地反応をしない安定した黒色を示す個体を選択します。また、体色の均一性も重要で、部分的に色が薄い個体は避けます。
オスの黄色い発色についても重要な選別ポイントです。前半身の腹側とヒレに鮮やかな黄色が現れている個体を優先し、黄色の発色が弱いか全く現れない個体は選別対象から除外します。この黄色の発色は、サタンメダカの最大の特徴の一つのため、妥協できない要素です。
親魚選択では、表現の優秀性に加えて繁殖能力と健康状態も重要な要素です。産卵数が多く、孵化率の高い個体を親魚として選ぶことで、より多くの優良個体を得ることができます。また、体型の健全性も重視し、筒状体型の特徴を適度に持ちながらも、健康で均整の取れた個体を選択することが長期的な系統維持の成功につながります。
サタンメダカの市場価値と入手
価格帯と販売市場について
サタンメダカの市場価格は、個体の品質や販売ルートにより大きく変動します。一般的には1匹あたり500円程度から取引されていますが、オークションサイトでは品質の高い個体や特別な血統の個体が高額で取引されることがあります。過去には最高35,300円で取引された記録もあり、優良個体の希少価値の高さがうかがえます。
ヤフオクなどのオークションサイトでの平均落札価格は約1,477円とされていますが、最安では1円から出品されることもあり、価格の幅は非常に広くなっています。この価格差は、個体の品質、血統の確実性、出品者の信頼度などによって決まります。
専門店やブリーダーからの直接購入では、より安定した価格設定となっており、血統の確実性や個体の品質保証も期待できます。特に作出者である丹下学氏の直系血統や、信頼できるブリーダーが管理している系統は、価格は高めでも確実性が高いため、多くの愛好家に選ばれています。
固定率の低さから、自家繁殖で優良個体を作出できれば、メダカ販売で大きな収益を上げることも可能とされており、これがサタンメダカの人気を支える要因の一つともなっています。
購入時の注意点と類似品種との違い
サタンメダカの購入を検討する際は、類似品種との違いを理解し、確実にサタンメダカを入手することが重要です。最も混同しやすいのは単純な「オロチヒレ長」で、サタンメダカとオロチヒレ長の主な違いは、オスの黄色い発色の有無にあります。サタンメダカはオスに黄色が現れますが、オロチヒレ長では現れません。
また、2018年にFUJIYAMAめだかから発表された「松井ヒレ長オロチ」とも別系統であり、こちらもヒレに黄色が出ないという明確な違いがあります。購入時は、これらの違いを確認し、オスの黄色い発色があることを必ず確認することが重要です。
購入時の個体選択では、ヒレの状態を詳しく観察します。ヒレが適切に伸長し、裂けや損傷がない個体を選択することが重要です。また、ブラック体色の濃さと均一性、オス個体の場合は黄色い発色の有無と鮮やかさも確認します。
信頼できる販売者からの購入を心がけ、血統の確実性や個体の健康状態について十分な説明を受けることも大切です。特に高額な取引になる場合は、返品・交換の条件や、万が一の場合の補償についても事前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
サタンメダカは、丹下学氏によって作出されたブラック黄金ヒレ長メダカの系統で、濃い漆黒の体色に長く伸びたヒレ、そしてオスに現れる美しい黄色い発色が特徴的な改良メダカです。ブラックキング(黒蜂×松井ヒレ長)にオロチを交配して作出された複雑な系統で、三つの異なる品種の優秀な特徴を併せ持つ独特の美しさを表現しています。オロチメダカとは明確に異なる品種であり、特にヒレの長さとオスの黄色い発色で区別できます。飼育においては基本的な改良メダカの管理方法で対応できますが、ヒレ長品種特有の注意点として、適切な水流管理とヒレの損傷防止が重要です。繁殖においては約3割程度の低い固定率が特徴で、理想的な表現を持つ個体の作出は困難ですが、その分希少価値が高く、優良個体は高額で取引されています。市場価格は500円程度から数万円まで幅広く、個体の品質や血統により大きく変動します。購入時は類似品種との違いを理解し、信頼できる販売者から確実な血統の個体を入手することが重要です。サタンという名前にふさわしい神秘的で力強い美しさを持つサタンメダカは、改良メダカ愛好家にとって一度は飼育してみたい魅力的な品種といえるでしょう。
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